新技術紹介 New Developments
バイオ脱色着色処理システム

21世紀は環境問題を解決できなければ事業が成り立たない位、環境への対応が重要である。

水質汚濁防止法や各自治体の排水規制条例等により透明度・色度・COD・BODの削減が重要になっています。

その結果、従来染色工場では凝集沈殿と活性汚泥を組み合わせて処理を実施し脱色に塩化第一鉄・水酸化アルミニウム等を多量に投入するため、排水量2000〜5000t/日の排水処理を行うのに、汚泥が20〜50t/日排出されています。多量の汚泥が発生することにより、汚泥廃棄処分費・人件費等のランニングコストが上昇します。

将来的には、汚泥の最終処分地も大きな課題となっています。

この様な処理方法から化学薬品や汚泥廃棄量の少ない処理方法の必要性が生じています。
本システムは、アゾ基を有する染料の着色排水を微生物により脱色処理するシステムです。
微生物処理と活性汚泥処理を組み合わせることによりCOD・BODも低下し、汚泥の排出量が少なく、安価なランニングコストが実現できます。

本システムは平成17年度の科学技術振興機構(JST)の独創的シーズ展開事業 委託開発の開発課題「着色排水のバイオ脱色処理システム」の開発結果の成功認定を受け開発した技術です。

バイオ脱色処理システムの特徴
バイオ脱色システムは、微生物でのアゾ染料分解が特徴です。

○微生物とは

微生物は、地球上のあらゆる場所(陸上・海・空・生体内等)に生息し、一般に肉眼では観察出来ず顕微鏡でしか見る事の出来ない大変小さな生物の総称です。

微生物には多種多様な種類がありますが、本システムで使用している染料分解菌はバチルス菌と呼ばれており、食卓でおなじみの納豆を作る納豆菌の仲間です。

納豆菌

学名 Bacillus subtilis var. natto

本システムで使用している染料分解菌 学名 Bacillus sp OY1-2

Bacillus OY1-2 の電子顕微鏡像

微生物は、我々人類が昔から利用しており前述の納豆を作る納豆菌や、大豆と小麦を微生物で発酵させた醤油等身近に利用されています。 排水の分野でも、活性汚泥は微生物を利用してCOD・BODを低減処理しています。

○酵素とは

微生物を利用した身近な納豆・醤油等も本システムでの染料分解も基本的な作用は、菌の代謝と
多種多様な菌が各々作り出す酵素の働きによって行われています。

酵素とは、生体内で起こる化学反応を触媒する物質(タンパク質)で、要するにそれ自身では機能を
持たないが、他の物質に対して触媒的に活性作用を有するタンパク質のことで、生体が物質を変化させて利用するのに欠かすことができない物質です。
我々、人間も消化・吸収等の代謝に体内で多くの酵素を使用しています。

酵素の特徴として、作用する物質を選択する能力をもち、その特性を基質特異性と呼びます。
本バイオ脱色処理システムに使用されている、Bacillus sp OY1-2はアゾ染料のアゾ基を酵素の基質特異性で選択的に分解し脱色する新しいシステムです。

本システムで使用されている、Bacillus sp OY1-2が持っている酵素は、国際生化学連合で定義されています。

 酵素の名前:azobenzene reductase(アゾリダクターゼ:アゾベンゼン還元酵素)
 その名の通りアゾ基を分解する酵素である事が分かります。

 

酵素番号:EC 1.7.1.6.
番号には国際生化学連合により4桁の番号で定義されています。
各々の番号の意味は
  1桁目の“1”が、酸化還元を触媒する酵素を表します。
  2桁目の“7”が、窒素化合物が電子供与体である事を表します。
  3桁目の“1”が、2桁目の窒素化合物の内、補酵素NADPとNADPHが電子受容体

  である事を表します。
  4桁目“6”が、上記3桁で定義された酵素の内で、アゾリダクターゼ(アゾベンゼン還元酵素)
  を表します。

 

本酵素が、アゾ基を分解する際に酸化還元反応で分解し、分解での電子受け渡しにNADPとNADPHを使用する事が表されています。

この中で、NADPとNADPHは補酵素と言い、コエンザイムとも言われています。
補酵素の中でも、NADPとNADPHはビタミン補酵素と呼ばれており、ビタミンB6・B12も仲間になります。
NADPとNADPHはナイアシンとも呼ばれ、栄養ドリンクにも含まれている以外と身近なものです。

○当システムでの脱色酵素アゾリダクターゼの特徴
・アゾ染料のアゾ結合を分解してアミン化合物に変換します。
・耐熱性を有しています。(70℃まで安定)
・広いPH適正があります。(PH6.0〜9.0、至適PHはPH7.5)

○染料分解(脱色のしくみ)
本システムでのアゾ染料は、下記の反応式となります。

アゾ染料(C.I.Acid RED88)のアゾ結合N=N部分に、酵素"アゾリダクターゼ”と補酵素NADPH
が反応して、1-ナフチルアミン-4-スルフォン酸ナトリウムと1-アミノ-2-ナフトールになりアゾ染料が分解されます。

○バチルス菌担持体

本システムにおいて、バチルス菌(Bacillus sp OY1-2)の酵素反応が重要ですが、菌自体は水中での 遊泳力が小さいため、排水の水量で流される恐れがあります。
 排水内の菌数を維持するには、BOD(菌の食べ物)が多くあり《流出量<菌の増殖数》であれば
理想ですが、ほとんどの実排水では理想的とは限りません。

排水内の菌の流出防止と安定的な菌数維持の為、本システムでは下記写真の多孔質の菌担持体を設け脱色反応槽(バイオリアクター)にて菌の流出防止とバチルス菌を固定しています。

又、バチルス菌数維持のため、プラントでは培養槽にて定期的に菌を補充しています。

バチルス菌担持体

バチルス菌担持体 ×100

○染料と脱色
弊社にて、反応染料・分散染料・スレン染料及び顔料にバチルス菌(Bacillus sp OY1-2)を添加し脱色実験を実施しました。
実験の結果、バチルス菌の脱色は空気を与える、好気状態より空気を与えない嫌気の方が効率良く脱色する事が判っています。
本脱色試験は、全て空気を与えない嫌気状態にて試験を実施しています。

表-1 染料脱色試験結果

染 料
サンプル数
脱 色
反応染料
23
21
分散染料
9
8
スレン染料
10
5

結果は、反応染料・分散染料が約90%、スレン染料で50%脱色が出来ました。

写真は、各染料の脱色試験のサンプルをピックアップしたものです。
左側がブランク(染料)、右側が菌による脱色試験後です。

反応染料

赤色系反応染料

青色系反応染料

分散染料

黄色系分散染料

赤色系分散染料

スレン

染料

青色系スレン染料

赤色系スレン染料

○染色排水と脱色
多種多様な染料が混合して排水されている染色工場の排水をサンプリングし、実際にバチルス菌(Bacillus sp OY1-2)にて脱色試験を実施しました。

写真は、染色排水脱色試験のものです。
左側が染色排水(ブランク)、右側が菌による脱色試験後です。

多種多様な染料が混合されている染色工場の排水も、脱色されている事が判ります。

 

グラフ-1

グラフ-1は、染色排水(ブランク)と脱色試験後のサンプルを分光光度測定です。
 全波長にて、吸光度が低減されています。

○テストプラント
弊社、染色工場テストプラントにて実排水運転を実施しました。
テストプラント仕様
 排水量        600m3/日(25t/h)
 バイオリアクター槽  200m3(滞留時間8時間)

グラフ-2

グラフ-2は、2008年1月〜7月までテストプラントでの、和歌山市排水規制条例による着色度測定を 実施したものです。(本データーはSSを含んだ測定値のため、SSを除去すると、着色度は更に向上します) テストプラントでも、脱色する事が確認出来ています。

 

グラフ-3

グラフー3は、染色工場テストプラントの分光光度測定です。
 工場排水においても、脱色しています。

本テストプラントでは、COD・BODも下記の様な結果となっています。

染色工場排水水
 BOD:500〜1500 mg/l
 COD:500〜1500 mg/l

処理水
 BOD :10〜50mg/l
 COD :30〜100mg/l

BODは、50mg/l以下
CODは、100mg/l以下
高効率の生物濾過を実現しています。

 

バチルス菌を使用した本プラントの特徴
○ アゾ系染料を分解するバチルスOY1−2(Bacillus属)を利用したバイオ脱色システム

○ バイオリアクター槽(脱色槽)では好気性・嫌気性処理を併用

○ バイオリアクター槽にシステム内で培養したバチルス菌とバチルス菌担持体を

   投入することで高い脱色性能が得られる

○ バイオリアクター槽での処理時間は8時間

○ 高効率のCOD・BOD除去率

○ 活性汚泥槽の滞留時間は24時間

○ 染色工場コスト試算※
 

A社

B社
C社
排水量(t/日)
3000
3500
3000
汚泥排出量(t/日)
440
120
80
排水処理費(万円/月)

1500

1200
1300
本システムによる排水処理費(万円/月)

750

875
750
本システムによる処理費削減率(%)
50
27
42

※排水処理費:人件費・電気料金含まず。

○ 汚泥排出量は凝集沈殿法に比べ1/5以下※

○ ランニングコストは凝集沈殿法に比べ1/2以下※

○ 設備投資はバイオリアクター槽、培養槽等で活性汚泥槽は現行のものを利用

※データはあくまで弊社実験による試算です。

PAGETOP