潜熱蓄熱材(パラフィン、カプセル、ボード)

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はじめに

2015年に国連サミットで採択された「SDGs」には、我々を含め国連加盟国193ヵ国が2030年までに達成する17の分野の目標があります。そのなかでも「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」「気候変動に具体的な対策を」という目標の達成には従来型の化石燃料や原子力だけに頼らない社会を創っていくことが急務ではないでしょうか。

1973年のオイルショック以後、エネルギーの消費量は2016年には1.2倍、家庭部門では1.9倍もの伸びになっており、特に家庭やオフィスビルでは空調によるエネルギー消費が多くを占めているという現実があります。空調などに使用されるエネルギーを減らすためには該当する温度域で消費されるエネルギーについて需要と供給のタイムラグを解消することやエネルギー消費の速度を遅らせること、また、太陽光や昼夜の寒暖差などのパッシブエネルギーの有効活用が可能な蓄熱材の使用が有効だと我々は考えます。

熱を一時的に蓄え必要に応じてその熱を取り出す技術を「蓄熱」と呼び過去にもさまざまに研究開発をされ、家やビルの空調用途にも多く採用が進みつつあります。

しかしながら我々は空調用途に限らず潜熱蓄熱材が省エネルギー化に貢献できる場所が多くあると考えております。そのため高機能マイクロカプセル化など技術開発を進めており今後も省エネルギー化ソリューションの創造を三木理研の使命とし取り組んでまいります。

 

潜熱蓄熱材とは

蓄熱とは?

蓄熱(ちくねつ)とは、熱を蓄えることです。最大需要時に蓄えを利用することで、熱源設備の容量を縮小することができま
す。また、運送用途においては蓄えた熱のみで空調など対応し熱源設備の設置または運転が不要になります。
蓄熱の身近な例として保冷材に蓄冷したものをクーラーボックスに入れて使う事や夜間電力を使用した貯湯式の給湯器や同じ
く夜間電力でレンガなどに蓄熱する暖房機などがあります。
蓄熱に使用される媒体は、蓄熱槽の水(氷)・潜熱蓄熱材・地中・建物の躯体・レンガやコンクリート・など様々です。

潜熱と顕熱

熱には顕熱と潜熱の2 種類があります。
顕熱=物質を加熱したときにそれが温度上昇として観察される熱です。
潜熱=熱のエネルギーが温度では現れない状態を意味します。例えば氷という固体は水という液体へ状態変化するために、熱
エネルギーを必要とします。この時の熱エネルギーは、あくまでもその状態変化のためのエネルギーとして消費され温度では
わかりません。 例えば氷という0℃の固体は、水という0℃の液体に変化するために熱エネルギーを消費し、そこに温度変化は発生しません。

蓄熱材における潜熱と顕熱

■顕熱蓄熱

・暖房用としては古くから実績があり、従来から安価な夜間電力の利用手段として使用されています
・蓄熱密度が低く、熱を貯めるためには大規模なシステムが必要です
・使用例:貯湯式の給湯器やレンガなどに蓄熱する暖房機

■潜熱蓄熱

・蓄熱密度が大きいため少容量で大きな熱量を蓄えることができます
・任意の一定温度で作用します
・システム構築が容易であり,耐久性の面でも優れています
・新しい省エネ材料として注目を集めています

■建材における顕熱と潜熱蓄熱の違い

潜熱利用の場合は目的の温度範囲を相転移付近に設定すれば効率よく熱エネルギーを利用できるのに対し、顕熱利用の場合はどの温度でも同じ比熱で熱を吸収・放出するため、適切な温度とするのに大きな熱量を要してしまう場合があり、冬に暖まらない、夏に冷えない状況になる場合もあります

潜熱蓄熱材のメカニズム

潜熱蓄熱材は物質が固体から液体、液体から固体へと状態変化(相変化)する際に必要とする熱「潜熱」を利用し、温度変化
を伴いません。それらの融点での融解熱、および凝固点での凝固熱が蓄積され、相変化する間に温度を保ち続ける原理を利用
するのが潜熱蓄熱材です。

ノルマルパラフィン 優れた潜熱蓄熱材

■ノルマルパラフィンとは

潜熱蓄熱材の原料となるノルマルパラフィンは一般式CnH2n+2 をもつ飽和鎖式炭化水素の総称です。一般的には石油や植物油から分離、精製して炭素数毎に製造されます。

 

融点がー5℃~ 42℃を中心に様々な種類のノルマルパラフィンを潜熱蓄熱材として使用しています。 ノルマルパラフィンは他
の潜熱蓄熱材に比べ以下の点で優れています。

●利用しやすい生活温度域
●大きな潜熱量
●熱への応答性がよい
●体積の膨張・収縮が小さい
●熱安定性、高温耐性
●過冷却が少ない
●繰り返し使用できる、利用時に分離・分解がない
●オーガニック(グレードにより)
●安価
●長寿命、自然劣化が少ない
●毒性・環境汚染性が少ない

 

蓄熱材ラインナップ

■三木理研 潜熱蓄熱製品チャート

 

潜熱蓄熱パラフィン

潜熱蓄熱材の種類は塩水和物、パラフィン、有機化合物などが存在しますが、その中でもノルマルパラフィンは人間が快適温
度と感じる25℃近辺の中低温度域における蓄熱ができ、相変化を繰り返しても劣化しない、毒性や腐食性が低い、また炭素数
の大小により融点が異なり様々な温度での蓄熱が可能である点が特徴です。

ラインナップ

マイクロカプセル

マイクロカプセルとは大きさ数μm~ 数百μm の小さな密閉容器を指します。 カプセルは壁になる物質と内容物となる芯物質
で構成されており、壁の材質や芯物質を選択することで様々な用途に利用されています。

■潜熱蓄熱材+マイクロカプセル

液体と固体を行き来する潜熱蓄熱材を多用途に使用するには小さく漏れない容器に入れる事が必要でした。
そこで当社が20 年来持つマイクロカプセル化技術を応用し、パラフィンをカプセル化することに成功しました。

 

■潜熱蓄熱マイクロカプセルの特徴

●繊維製品へのプリント(定着)が可能でベッドマットなどで高い実績
●高い強度により樹脂への混錬が可能、低い漏れ率、耐溶材性能
●粒径コントロールが可能
●ノンホルマリンタイプ

■殻剤の種類

殻剤にはアクリルタイプと、メラミンタイプの2 種類があり用途により使い分け頂けます。

 

■ラインナップ

メラミン

 

アクリル

 

ゲル状潜熱蓄熱材

融点20 度以下のノルマルパラフィンは危険物に第4 類第3 石油類等に分類されますが、ゲル化したものは非危険物(可燃性
固体類等)となり3000 ㎏以上の場合でも消防への届け出だけで対応が可能となります。

■特徴

●三木理研のゲルは特殊技術により他社品に比べパラフィンの純度が10% 以上高いため少ない使用量で高い潜熱量が期待で
きます。
●90℃で液状に戻る熱可塑性ゲルであるため容器への充填も比較的簡単に行えます。

 

■ラインナップ

潜熱蓄熱ボード(リケンボード)

潜熱蓄熱マイクロカプセルを不織布に含浸させプレス圧着したものです。

■特徴

●不織布を重ねることで任意の厚さにすることが可能
●加工が容易
●表面のPET 張りが可能(防汚、摩耗対応)
●次世代省エネ建材支援事業の補助対象製品

■レギュラーラインナップ(900㎜ ×1800 ㎜)

 

活用例

■寝具

冷感マットレスなどに使用する事により寝苦しさを解消し健康と省エネに貢献しています。横たわると体温でカプセル内の蓄
熱材が融けて吸熱し、寝返りをうつと先ほどまで寝ていた部分の蓄熱材が室温により再び凍る(凝固)ことで冷たさが持続し
ます。

 

■建築材料

漆喰などへの混錬、蓄熱ボードを空調用熱交換器などに利用することで太陽熱や夜間冷気などのパッシブエネルギーを有効活
用することができます。
(社)日本潜熱蓄熱建材協会 理事企業

一般社団法人日本潜熱蓄熱建材協会ホームページより

 

■自動車部品

樹脂や素材と混錬することにより、部品が性能を発揮する特定の温度を維持し易くします

事例として、自動車部品“キャニスター” に使用されています。
キャニスターとは、活性炭を用いて燃料タンク内で発生するガソリン蒸気の大気放出を抑制する環境対策用の自動車部品です。
活性炭の温度を一定に保持する部分に潜熱蓄熱材が使用され、性能向上に貢献しています。こういったキャニスターは環境対
策として有効なことから、今後、自動車メーカー・車種へ採用されることが期待されています。

 

■定温物流

医療品や食品、精密部品などの輸送に15℃~ 20℃といった中間温度域での温度保持を空調機器に頼らず実現します。

例えば、米飯・惣菜の配送をチルドではなく15℃~適温での配送で行うことで、米に含まれているデンプンの劣化を防ぎ、
炊きたてに近い状態を維持することが可能。他にも果物や野菜の輸送にも利用されています。

 

バイオ関連の検体や治験薬・医薬品等の保温輸送ボックスに使用されています。蓄熱材と合わせ温度変化の激しい環境下で
「2 ~ 8℃」「15 ~ 25℃」等の温度帯を長時間、高精度に維持できます。

 

使用の注意点

使用する場合は蓄熱材の温度変化が、蓄熱材の融点よりも高くなり凝固点よりも低くならなければ相変化が起きず蓄熱材の性
能を発揮できませんので蓄熱材の設定温度や使用場所はご注意ください。

Q&A

Q: 潜熱蓄熱材を使った家は夏に暑くなりすぎることになりませんか?

A: なりません。
例えば一般的に暖房需要で使用される23℃で蓄熱する潜熱蓄熱材であれば、夏に日射などで23℃以上に熱が上がり高温になっ
た場合でも、夜間やクーラーなどで再び23℃まで冷える速度(必要なエネルギー)は一般の建材と変わりません。そこからさ
らに23℃以下に冷やそうとした場合には発熱作用がありますで時間がかかります。
むしろ朝の室温が23℃以下であった場合は、その後に日射などにより室温が急激に上昇する(オーバーヒート)を防止するこ
とになり、快適な温度維持に貢献します。

 

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