新技術紹介 New Developments
モイストキュアー法
近年の形態安定加工ではホルマリン75ppm以下とされるようになっており、弊社でも早くから対応を行い1997年には低ホルマリン樹脂加工剤としてリケンレヂンMS−150の販売を開始した。その後、この合成技術を使用した商品郡は多くの染工場で評価を得ており、加工布のホルマリン値は50〜100ppm低減できたものと考えている。現在の樹脂加工は樹脂触媒だけでなく、シルケットを含めた前処理方法や管理技術がさらに重要となっており、未だ多くのテーマが存在し、形態安定性はもちろんのこと、風合いと白度に優れた樹脂と加工方法が求められている。今回は樹脂触媒の紹介だけでなく、形態安定加工として一般的なドライキュアー法、ポストキュアー法また海外で加工量が増加しているモイストキュアー法について処方を紹介したいと思う。
プレキュアー法とポストキュアー法

<プレキュアー法>

樹脂浸漬 → 乾燥 → キュアー → 縫製

プレキュアー法(パッドドライキュアー法)は連続で繊維を加工しキュアーを行う方法であり、ポストキュアー法は縫製後に製品処理としてキュアーを行う方法である。

<ポストキュアー法>

樹脂浸漬 → 乾燥 → 縫製 → キュアー

ポストキュアー法は、縫製後に樹脂を反応させるため、優れた縫製技術と一体化すればパッカリングを含めた形態安定加工としては非常に優れた加工方法である。ポストキュアー法の処方は一般の樹脂加工と同様であるが、加工布が縫製後キュアーされるまでの間に樹脂化が進むことを避けなければならず、条件に合わせ樹脂触媒が選定されなければならない。
プレキュアー法の処方例を以下に示した。樹脂、触媒、シリコーン柔軟剤、ポリエチレンエマルジョンが基本処方である。必要に応じて脂肪酸柔軟剤、吸水柔軟剤、反応性ウレタン樹脂等を併用する。この処方ではホルマリンは40ppm程度でありホルマリンキャッチャー剤は特には必要としない。ポストキュアー法も同様の処方であるが、触媒としてリケンレヂンMX−2を推奨している。

処方例

リケンレヂン

MS−22 12%
リケンフィクサー MX−18 3%
リケンソフナー AS−270 3%
リケンゾール PE 3%
pad → dry(〜110℃) → cure160℃×2分
その他 リケンソフナー  N−4  〜2%
リケンレヂン   PES−5  〜1%
リケンレヂン   MU−52  〜3%
リケンフィクサー XT−58  〜0.3%
リケンレヂン   C−76  〜1%
PAGETOP
モイストキュアー法

<工程>

前処理
布pH調整

樹脂加工
乾燥
水分5-15%

モイストキュアー
30-50℃
18-24hr

ソーピング

乾燥

柔軟剤
仕上げ加工
乾燥 仕上げ

モイストキュアーでは、布上に水分が存在し、ドライキュアー法との違いとなっている。一般に樹脂加工での防皺性は湿潤状態で架橋させれば湿防皺性が向上し、乾燥状態で架橋させれば乾防皺性が向上するといわれている。このため樹脂加工ではモイストキュアーといった湿潤状態でのキュアーが検討されてきた。モイストキュアー法は樹脂浸漬、乾燥後、水分を10%程度残して巻き取り、常温付近で数十時間反応させる方法である。常温付近で反応させるため強酸性の樹脂浴での処理となるが、強度と乾湿防しわ性に優れた物性を付与することができる。工程はバッチ式となり、ソーピングが必要である。通常のドライキュアー法に比べ過剰な樹脂が使用されること、また塩酸や硫酸といった強酸を触媒として使うため樹脂浴pHは1〜2と低く、染料の堅牢度低下、強度低下は避けられない加工である。現在では触媒や助剤に工夫がなされているが、樹脂浴pHは同様であり種々問題のある加工となっている。適切に処理された時に得られるW/W性は非常に良く強度とのバランスも良い。ソーピングがなされるため風合いは柔らかくホルマリンも低い。弊社ではこれらの加工に対応するため以下の処方を推奨している。また加工結果を一般のドライキュアー方と比較した。

モイストキュアー加工条件
配合A

             No1  No2

リケンレヂン RG-385C 170−200g/L
リケンフィクサー MX-55  80−100g/L
リケンゾール PE   50g/L
リケンレヂン PES-5   15g/L
リケンソフナー AS-270   30g/L

配合B リケンレヂン PES-5   15g/L
リケンソフナー AS-270   30g/L
リケンレヂン C-76   20g/L
加工条件 Pad(A)→dry70℃×1min→50℃×18hr moist cure→soaping→dry130℃×1min→Pad(B)→dry130℃×1min
比較ドライキュアー加工条件
配合

              No3

リケンレヂン RG-17   100g/L
リケンフィクサーMX-18    30g/L
リケンゾール PE       20g/L
リケンソフナー AS-270   30g/L
リケンレヂン PES-5    15g/L

加工条件 Pad→dry110℃×1min→cure150℃×2min
   
元布
No1
No2
No3
防皺性%(乾)
43.1
82.4
87.2
80.4
43.3
82.2
86.9
75.6
防皺性%(湿)
33.5
81.8
89.3
71.1
34.4
80.7
84.7
60.7
引裂強度g
730
680
572
715
503
423
368
423
 
1233
1103
940
1138
W/W性  
1.x
3.3
3.4
2.9
上記の結果では湿乾の防皺性が注目されドライキュアー法のNo3では明らかに湿防皺性は悪い。しかしモイストキュアー法のNo1とNo2では乾防皺性と湿防皺性は数値が近似しており湿防皺性が向上しているのがわかる。また結果はW/W性に現れており、ドライキュアー法が2.9に対しモイストキュアー法では3.3級以上の数値となっている。表中の残留ホルマリン値が高いが、工場実機では問題なく低下する。ドライキュアー法においても樹脂を増量し反応性シリコーンを併用すれば3.3級程度は発現するが綿100%ではそれ以上は難しいのが現状である。モイストキュアー法ではW/W性3.5級が可能なレベルにあり優れた加工方法と言える。
PAGETOP
スチームキュアー法

<工程>

前処理
布pH調整

樹脂加工
100-130℃
30%スチーム

ソーピング
乾燥

柔軟剤
仕上げ加工
乾燥 仕上げ

スチームキュアーは、スチームを混合し布が絶乾とならない条件で熱処理する方法である。キュアー雰囲気下の水分をコントロールすることが必要であるが、わずかに湿潤状態でキュアーされるためドライキュアー法に比べ強度やW/W性が良いとされる。キュアー温度は低いため(〜130℃)強触媒を使用しなければ架橋は不十分となる。加工は専用の連続スチ−マ−によりなされ、得られる物性はバッチ処理のモイストキュアー法と同様の物性が得られる。しかし、この加工は強酸性下、水蒸気による加水分解も同時に進行する加工となり、樹脂には過酷な条件での加工となる。またソーピングは必須である。
以下弊社ラボで行ったスチームキュアー加工の結果を示す。試験では樹脂量をモイストキュアー加工の半分量として行った。試験した結果を示す。

スチームキュアー加工条件
配合A

リケンレヂンRG-385C   100g/L
リケンフィクサーMX-55 100g/L
リケンソフナーXT−900    20g/L
リケンゾールPE    20g/L

配合B リケンレヂンXT−900    20g/L
加工条件 Pad(A)→steamcure100-120℃×3min→
soaping→dry130℃×1min→Pad(B)→dry130℃×1min
スチームキュア加工機

Universal steamer Dhe型WARNER MATHIS社製
(和歌山県工業技術センター所有)

スチームキュアー条件

A 100℃×3min スチーム30%
B 120℃×3min スチーム30%

   

A

100℃

B

120℃
防皺性%(乾)
81.5
89.3
80.9
87.8
引裂強度g
730
497
486
330
 
1216
827
残留ホルマリンppm  
149
213
W/W性  
3.0
3.4
試験はキュアー条件を100℃3分スチーム30%と120℃3分スチーム30%の2水準で行った。その結果、キュアー温度が20℃違うだけで著しく樹脂化が進むことがわかる。得られる物性については、防皺性は80%を超える数値となっている割には引裂強度は良く保持されているものと考える。120℃では物性向上が見られたがホルマリンが高くなり強度低下も著しい。温度に依存する加工であり管理の難しい加工である考える。またスチームにより樹脂へのダメージは大きく耐塩素性が低下するなど今後の課題は多い。
PAGETOP
今回使用した薬剤の紹介

リケンレヂン RG−385C
リケンレヂンRG−385Cはモイストキュアーやスチームキュアーなど低温での形態安定加工を目的として設計された高反応性高濃度グリオキザール樹脂であり、リケンフィクサーMX−5
5を併用することによりその効果を発揮する。
 固形分) 約70%
 pH)  弱酸性
裂強度と形態安定性(防しわ、防縮、W/W性)のバランスが良好でソーピング後の残留ホルマリンの数値も低く良好である。リケンフィクサーMX−55を併用すると樹脂浴pHは2以下となるため助剤選定には注意が必要である。

 

リケンレヂン MS−22
リケンレヂンMS−22は風合いがソフトであり、E/Cでの風合いも良い。引裂強度の低下も少ない。プレキュアー法ではリケンフィクサーMX−18またはリケンフィクサーMX−27Nを推奨している。
 固形分) 60%
 pH)  弱酸性
 遊離ホルマリン) 1%以下

PAGETOP
終わりに

今回はドライキュアー法の他、ポストキュアー法とモイストキュアー法を紹介した。モイストキュアー法は高い乾湿防皺性を狙える加工であり、洗濯後の樹脂残存率を上げれば非常に高度のW/W性を狙える加工である。弊社はノーソーピングを前提としたドライキュアー加工を中心に物性の向上とソフト化をテーマに樹脂を開発してきた。

別表に主な商品を紹介した。これらにより処理条件に適した加工が行えると考えている。また新たに低ホルマリン樹脂、ノンホルマリン樹脂の開発を進めており、今後も誠意検討を行っていく所存である。
グリオキザール樹脂一覧
リケンレヂン

物性

ホルマリン値(ppm)
風合い
NONF-33
-
ノンホル


DEX-20
-
ノンホル
 
MS-150

30〜50
MS-250

50〜70
MS-22
40〜60
MS-296
○〜△
40〜60
RG-17
70〜120
○〜△
RG-115E
100〜150
○〜◎
RG-220
70〜120
RG-30
150〜180
RG-83
50〜70
RG-85
○〜△
100〜150
RG-1H
200〜250
RG-80
300〜350
ホルマリン値は、各樹脂(10%)に触媒リケンフィクサーMX−18を(3%)使用した数値
触媒一覧
リケンフィクサー

触媒力

PH
MX−1


約3

MX−2
約5.5
MX−3

約7
MX−13

約4
MX−18
約3
MX−25
2以下
MX−27
約2
MX−55
モイストキュアー用
1以下
MX−7
ノンホル用
約2
DMX−5
DEX-20専用
約2

<その他>
リケンゾール PE ポリエチレン系強度低下防止剤
リケンレヂン PES-5 水溶性ポリエステル系柔軟剤
リケンソフナー AS-270 吸水性アミノシリコーン柔軟剤
リケンソフナー XT-900 反応性シリコーン柔軟剤
キャッチャー剤 C-76 ホルマリンキャッチャー剤
リケンソフナー N-4  脂肪酸系柔軟剤
リケンレヂン MU-52 水溶性ウレタン樹脂

リケンフィクサー XT-58  ウレタン樹脂用触媒

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